肉と冬瓜のスープ

外で飲むビールはなぜあれほどにも美味いのか。

その謎に迫るべく、外で飲むビールの効能や、それに伴う経済効果を研究をしている大学がある……かどうかは知らないが、これは私が今学生ならば是非とも研究したいテーマの一つである。

 

ビアフェスタにビアガーデン、お祭りの屋台や海の家。 世にはあまた多くの外飲み施設があるが、そのどれも、然るべき時期に飲めば大抵の出来事は素晴らしい思い出になる。

とは言え、家で飲むのも悪くないものだ。 窓を複数空け風通しを良くしたら、キンキンに冷えた缶ビールを空け、つまみをつつく。 胃が落ち着いたら、冬瓜のスープをすする。

 

庶民の幸せはこのようにして守られるのである。

 

さてこの冬瓜、冬とは名ばかりの夏野菜である。 そのさわやかな香りと使い勝手の良さで、冷汁やサラダにしてもいただける、夏の万能野菜だ。

 

冬瓜、豚肉か鶏肉、例によってだしつゆ(昆布)、酒などを用意しよう。 冬瓜はわたを取り、皮をむいて一口大に切り分けておく。

 

根菜類は水から煮込むのがならわしだが、この冬瓜も水から煮込む。 沸騰したら肉とだし、酒を加えて火が通ったら一旦火を消す。

これはスープもよく味わえるものだから、水はたっぷり入れて薄味にしておこう。

 

一度冷めると冬瓜が出汁を吸って、冷たくして食べてもすこぶる旨い。 豚を使うと脂の舌触りが悪くなってしまうため、冷たくして食べるなら鶏、温かくして食べるなら豚、というように使い分けるといいだろう。

 

話は冬瓜と逸れるが、夏の初め、田舎の祖母の家の縁側で飲んだ酒。 あれはうまかった。 ベランダでも、庭でもない、縁側。

蚊取り線香の匂いが入り混じる黒霧島の湯割りは、何とも形容しがたい季節のノスタルジーを感じさせた。 ロマンティックと言ってもいいかもしれない。

あの酒を飲むためだけに将来は縁側のある家に住みたいくらいだ。

いや、住むべきなのだ。

 

人はパンのみに生くるにはあらず。 酒のみに生くるのだ。

 

このところ外食が続いてしまい、何か胃に優しいものを……などと冬瓜のスープをすすりながら、その美味しさに感動し、結局はビールを空ける。

 

歴史は繰り返すし、人は学ばないのである。